基礎データ
①所得水準
経済発展の段階としては、シンガポールは東南アジアで抜けた存在となっています。近年での成長がめざましいフィリピン、ベトナムは他国に比べ、平均的には低い所得水準に留まっています。
②日系企業進出数
早くから自動車産業を中心に産業集積が進みアジアの製造拠点としてのプレゼンスを有するタイが進出数として圧倒的です。次いで最も経済発展が早く、また地域統括拠点としての進出も多いシンガポール、製造拠点として中国あるいはタイ+1の位置づけが強いベトナムと続いています。シンガポールを除き40-50%は製造業種での進出ですが、ベトナム及びフィリピンではサービス・小売といった業種でも20%を超えている特徴が見られています。また、在留邦人数も比較的これに比例した数値となっています。
仕事・学習篇
経済成長が続く中で、東南アジア各国では国内企業も成長、拡大を続けていますが、投資・技術を要する製造業等に関しては、日本を始めとする外資企業のプレゼンスが依然強いのも現状です。下記では、各国の働き方や勤務先としての日系企業に対する意識等に関して見ていきます。
①日本語学習、留学
日本への留学生の出身国として、シンガポールを除いては20位以内に入る主要先ですが、中でもベトナムは中国に次ぐ第2位の6万1千人と東南アジアの中で大きく突出しており、これに伴い日本語学習者数の指標となる日本語検定受験者数も群を抜く数字となっています。昨今で急激に増加しているベトナムへの日系企業進出、ODAによる建設関連を始めとした日系企業の認知向上、等から日系企業への就職も視野に日本への留学、日本語学習の人気が高まっていると想定されます。もう一つの要因としては、コストの問題として欧米等に比べまだ生活コストや学費が割安であることから、所得水準としては相対的に他国より発展途上にあるベトナムに選ばれやすいという点もあります。ベトナムでもトップの富裕層はやはり欧米を留学先として選ぶケースも多くなっています。
②勤務先としての日系企業
当調査では他に韓国、中国企業も対象となっていますが、いずれの国でも10%台にとどまっており、日本企業の人気はこの2ヶ国より高いです。日本企業での勤務を希望する割合はベトナムとタイが高い結果となっています。ベトナムは依然外資企業が産業の中心という色合いも強いことも影響していると思われますが、タイでは日本企業の人気がアメリカ企業よりも高く、古くから日系企業が進出し勤務先として広く認知されている様子が伺えます。
③働き方
下表は野村総合研究所が2011年に行った東南アジア各国での生活に関する意識調査のうち、就業に関する考え方に関連する項目について日本におけるアンケート調査の結果と対比する形で記載したものです。
東南アジア各国でも、日本と同様に周囲との人間関係を重んじる傾向がありますが、その中でフィリピンは個の意識が強いという結果が出ています。一方で、努力・訓練を厭わない姿勢が強くなっています。これは質問項目の5での起業・独立の意識が強い、という結果にも繋がっているとも想定されます。
またこの中でタイも2.努力・訓練が必要なことはあまりやりたくない」「7.自分がやりたい仕事がなければ働かなくてもよい」という考え方の人が多い点で、特徴的な傾向を示しています。豊かな国土を持ち、おおらかな気質を持つことが背景にあるという見方もできるかもしれません。
また、マレーシア・インドネシアでは比較的上下関係に対する意識が強い、という傾向が見られます。
なお、全体として最も日本との回答結果との差異が小さいのがベトナム、大きいのがタイという結果となっています。
一般に日本と比べ東南アジアでは離職率が高いと言われていますが、右記の転職時に前職で働いた期間に関するアンケート調査結果でも、3年未満での転職が日本より相当の割合で多くなっています。対象国のいずれも概ね70%前後となっており、マレーシア男性及びインドネシア女性で80%近く、勤務期間の短い間での転職が多い傾向を示しています。
中国は41万8327人(全体の25.2%)、ベトナムは40万1326人(24.2%)、次いでフィリピンの17万9685人(10.8%)、ブラジルの13万5455人(8.2%)などとなっている。前年比伸び率の上位3カ国は、ベトナム(26.7%増)、インドネシア(23.4%増)、ネパール(12.5%増)だった。
主な国籍別の外国人労働者数
中国(香港などを含む) |
41万8327人 |
ベトナム |
40万1326人 |
フィリピン |
17万9685人 |
ブラジル |
13万5455人 |
ネパール |
9万1770人 |
韓国 |
6万9191人 |
インドネシア |
5万1337人 |
ペルー |
2万9554人 |
2019年10月現在:厚生労働省調べ
在留資格別にみると、永住者や日本人の配偶者らを含む「身分に基づく在留資格」が全体で最多の32.1%。「技能実習」が23.1%、留学を含む「資格外活動」が22.5%、芸術や宗教、報道、研究、高度専門職を含む「専門的・技術的分野の在留資格」の19.8%だった。2019年4月に創設された「特定技能」の労働者数は 、10月末時点では520 人だった。
外国人の就労先を産業別にみると、「製造業」が48万3278人と最も多く、全体の29.1%を占めたほか、「卸売業、小売業」(12.8%)、「宿泊業、飲食サービス業」(12.5%)などの比率が高かった。